今年は―――黒猫と…
倭人とはじめてのクリスマスイブを過ごす。
油断したら飼い猫がすぐに登っていきそうな高いツリーを眺めて、
ケーキのような甘い彼を隣に
冷たくなった手を温めあうように手を絡ませて。
「ごめん、私今年は……」
言いかけて
「自分から引き込んだくせに、
抜けるなんてねぇ」
浩一が声を低めて、私は思わず絆創膏が貼られた指を隠すようにぎゅっと手に力を入れた。
「―――なんてな…冗談だ」
浩一は軽く笑って、でもその強引な笑顔はどこか引きつっていた。
「あのネコと一緒に過ごすの?」
そう聞かれて、私はぎこちなく頷いた。
浩一は「ふーん…」と小さく返して、私の方へそっと手を伸ばしてくる。
思わず身を引いたけれど、一瞬だけ浩一が傷ついたような表情をした。
思わず動きを止めて浩一を見上げると、浩一はまたも表情を緩めそっと私の髪に手を伸ばしてきた。
「俺はずっとお前の近くにいた。
誰よりもお前を分かってるつもり―――
それを良く知りもしない高校生のクソガキに取られてたまるかっての。
すっと想い続けてきたんだ。
朝都に何を言われようと、今この瞬間で諦められないし、諦めるつもりもねぇし」
はっきりと言われて、戸惑った。
浩一は愛しそうに目を僅かに伏せ、ぎこちないけどゆっくりとした動作で私の髪を撫で梳く。
―――言わなきゃ…
「私は―――黒猫が…倭人が―――…好…」
言いかけたときだった。
浩一が私の唇に人差し指をつき付け
「しー…」
まるで内緒話をするときのように声を低めて、
ドキンと心臓が鳴った。
浩一が顔をゆっくりと寄せてきて、私は咄嗟に顔を逸らした。
「…な、何するつもり。ここ医務室よ」
そう目を吊り上げて咎めると、
浩一は片方の指でこの医務室の鍵をくるくる。
「誰も入ってこねぇよ」
浩一の低い言葉を聞いて、私は目いっぱい目を広げた。



