「これで大丈夫」
浩一は絆創膏を貼り終えて満足。だけど顔を上げようとはしない。
いつものように私の顔を見てあの犬みたいな人懐っこい笑顔を浮かべることはなかった。
言わなきゃ。
「……浩一…あのね…」
言いかけると、ぱっと浩一が顔を上げた。
僅かに眉尻を下げて切なそうに瞳を揺らしている。
その顔を見て―――
何も言えなくなった。
口を噤んだ私を見て、浩一は安心したのかちょっと顔を逸らして
「…あと一ヶ月したらクリスマスだよな。
今年もやるの?
お前の研究室。クリスマスパーティー」
クリスマスパーティーと言われて、「ああ、そうだった」と今更思い出した。
なんてことない『クリスマスパーティー』と名の付く忘年会だ。
最初は恋人の居ない寂しい研究員の集まりでパーティーをはじめた。(私はそのとき彼氏が居ませんデシタ)
カーネル教授と数人の研究員、
毎度おなじみ、後輩くんと院生の先輩と私しか集まらないから
(つまり毎年このメンバーに恋人が居ない寂しい状態)
パーティーにしちゃ寂しすぎだろうってことで、三回目から私が浩一と涼子も誘ったのだ。
+溝口さん。
溝口さんだけは純粋にパーティーを楽しんでるわけじゃなくて、仕事モードでカーネル教授のお相手をしてくれているから、
私たちは随分勝手なことばかりしていた。
シャンパンを開けて、ケンタッキーを食べて。バカみたいに騒いで。
三回目の去年は涼子がどこかエロっぽいサンタのコスプレしてくれて、大いに盛り上がった。(男連中ダケ)
「もう…そんな時期なんだね…」
ぽつりと漏らすと
「今年もお前、参加するだろ?」
そう言われて私が顔を上げると、浩一が真剣なまなざしで
私を見つめていた―――



