黒猫は…倭人は―――…利用された…?
「まぁ、俺もそんなに最初好きじゃなかったら、お互い様だ?
どっちが悪いとか言い切れないよなー」
黒猫はちょっと明るく笑って頭の後ろに手を置く。
「き、聞き辛いんだけど……その子は先生とも付き合ってたわけ?」
「いや。あいつの完全なる片想い。せんせーは大人で、しかもバツイチ。
元カノの気持ちにちっとも気付いてなかった……と思う。
俺も早く気付くべきだったんだ。
あいつがバイオリンをはじめた理由。
若い頃シトウ ヒビキがまだ現役でバイオリニストとして活躍中、あいつのバイオリンを聴いてバイオリニストを目指したくなったんだって」
黒猫は自嘲じみてちょっと前髪を掻き揚げると深くため息を吐いた。
「三年になってさー、進路相談とかあるじゃん?
進路を決めるときあいつ他県にある完全寮生活の音大付属の高校に通いたいって言い出したんだ。
頻繁に会えなくなるのは寂しかったけど、でもあいつが夢を追ってたって知ってたし、
引き止めなかった。
“そっか”って一言。
そしたら……」
そこまで言って黒猫は口を噤んだ。
言いたくないかもしれない。
黒猫は僅かに俯いて再びマグカップに視線を落としている。
私はそんな黒猫の手を握って
「話して?」と先を促した。
「嫌なことかもしれないけど、そのまま言わずに押し込めたままだと消化されないまま胸に残るんだよ」
黒猫はきゅっと私の手を握り返してきた。
「話すよ。全部―――…」



