Chat Noir -バイオハザー度Max-




「クラシックが好きで持ってるCDあれこれ貸してくれたけど、


正直、俺にはわかんなかった。


特別話しが合うわけじゃないし、住んでる世界が違う感じがして


何で俺?って疑問にも思ったけど


あのとき俺も若かったからなー…無理してたと思う」


黒猫は遠くを見てしみじみ。


疲れ切ったおっさんみたいな表情して…


ってか『あのときは若かった』って!


「あんた今でも若いじゃない!!くっ!この肌ツヤとか羨ましい!嫌味か!」


思わず黒猫の顔を


ガっ!


と挟んで私の方を向かせると、黒猫は苦笑。


大きな目をちょっと細めて僅かに目を伏せる。


「…な、何よ…。私はフザケテなんかないわよ。真面目に聞いてるわよ?」


黒猫は口の端でちょっと笑って私の手を包んだ。


「…そーゆうわけじゃないって。


何か俺―――…今、すっげぇ楽。


変な意味じゃなくて…




こうゆう話するときってサ、やっぱり付き合ってる相手を少なからず不快にさせるだろうし


傷つけたり、悲しませたりするのはやっぱヤだったから…」




黒猫は私の手を包みながら視線だけを横に動かして、私から目を逸らす。


そ、そんなこと―――…考えてたの…


黒猫はトキドキ私よりも“大人な”考え方をする。


だけどすぐに


「かと言ってあんまり無関心なのも寂しいけどー」


素直にちょっと笑って


私は―――…





「あんたの過去に何があったのか気になってたし、今でも気にしてる。


でも、生きてる人間には必ず過去はあるの。


それを受け入れることで新しい関係ができていくの。


だから、話して―――?」





黒猫の目をまっすぐに見つめて言うと、黒猫はまたも安心したように頬をゆるめた。



「過去ってほど大層なもんじゃないけど。


あいつが稽古で通ってたバイオリン教室の発表会とか、呼ばれて見に行ったときは


さすがにあいつが一番うまいと思ったよ。


カレシの贔屓目かもしれないけど。あいつだけキラキラ輝いてるように思えた」


キラキラ…


黒猫の口からそんな言葉―――聞きたくない…けど


聞かなきゃいけない。


耳を逸らしてはいけない。


私は―――知りたかったんだから。


黒猫の過去を―――…