「ちょっとぉ。それは非売品なのよ。
今製薬会社のキャンペーンやってて抗体一つ買うと、おまけでついてくるの」
「コウタイって?あんたが研究室で使ってるやつ?病理学だっけ…?」
「細胞病理学。病原菌を研究してるの。今年はうちの研究室、でかい科研費(国からの研究費用)当てて予算があまりそうだから、
教授におねだりして買ってもらったの。抗体のアンプル自体はこんなんで3万もするのよ」
私は親指と人差し指で一センチぐらいの感覚を作った。
「そんなんで3万?ってか3万でこれ??ってかこんなん欲しかったの?」
と、黒猫は呆れ返っている。
真剣に欲しかったわけじゃないけど。
マウスの背中に製薬会社のロゴがピンク色で入ってる。普通に手に入るものじゃないし。
「いらないのなら返して」
私はマウスのストラップを黒猫の手から奪い返した。
ホントは教授におねだりしたのはアンプル二本。しめて6万円也。
ま、実験でどのみち使うからいいっちゃいいけど。
つまり私の分もあるわけで、さりげなくお揃いにできたらな~なんて軽い気持ちだった。
けど考えてみれば男の子はこんなん欲しがらないよね。
しかもお揃いって、いい年した女が高校男子とお揃いで浮かれてんのもどうかと……
ぅわ。急に恥ずかしくなってきた。
今はもう一匹のマウスは私のケータイについてるけど、あとで取り外そう。
それまでに黒猫に見つからなければいいけど。
浩一か涼子、どっちかにでもあげる…か。
なんて考えてると、
「他の男にねだるなよ。これぐらい俺が買ってやるって」
と、黒猫の前脚……もとい手が伸びてきてマウスを奪っていった。
「いや、これぐらいってこれ…そもそも売ってないから」
なんて返すも、黒猫は気にしてない様子。
「いらない、なんて言ってないけど?
ちょうだいよ」



