思わず黒猫の姿を凝視すると、黒猫は顔を赤くしてぷいと顔を逸らす。
あ…
照れてる。
何だよ、ちくしょう。
イマドキの若者なのにアナログだな。
でも
“好き”って言葉に出して
はっきりと聞くって
こんなにも嬉しいことだったんだね。
「………ってこと」
「…ってこと、ですか」
熱くなった顔を覆って、照れ隠しに私もぽつりと呟いた。
「ってことです」
黒猫は益々ちっちゃな声で頷いて、「へへっ」と小さく笑った。
なんだよ、ちくしょうめ。
嬉し過ぎるじゃん。
可愛すぎだ。
まだ照れて赤くなっている黒猫に
『ただいま青春中です』と言う札をぺたっと貼り付けてやりたい。
そして私にも
『ただいまドキドキ中です』と言う札を自らくっつけたい。
「―――…と、まぁ思ってることをその場で口にしないと、
気持ちがすれ違ったりしちゃうからな、
んで、行動しようと思ったときは遅かった…なんて後悔したくないんだ。
って俺の経験」
経験―――…って、その歳で悟ってんじゃないわよ。あんたどんな過去を持ってるってのよ。
ちょっと訝しげに黒猫を覗き込むと、黒猫はちょと寂しそうに眉を下げて
吐息をついた。
「前にちょっと話したじゃん?
中学に元カノがいたこと」
中学のときの元カノ―――……
ああ、そう言えばはじめてデートした公園で聞いた。
「相手はタメで、同じ中学だったんだ」
黒猫は私が覚えていると思ったらしく、とつとつと語りだした。



