黒猫は言われた通り、駅のホームの椅子で制服のポケットに手を突っ込んでぼんやりと線路を眺めながら座っていた。
「ごめん、待った?」
恋人同士の待ち合わせする際の常套句に、気恥ずかしいと言うよりもわざとらしくないかな、って方が気になった。
「ううん。電車見てた。結構面白いことを発見。
でも、言っておくけどテツ(鉄道オタク)じゃないよ」
いつも通りの黒猫。
何を話されるのかドキドキしてた私は正直拍子抜け。
「お、面白いことって何?黒猫マークでも見た?
ネコバスもとい、ネコ電車とか」
私も平静を装って黒猫にぎこちなく笑いかけると、
「何それ」
黒猫の口癖を聞いて、しかも白い歯を見せながら無邪気に笑う少年の笑顔を目にして
私は笑い返すどころか
不覚にも
泣き出してしまった。
「ごめん……倭人。ごめんなさい」
私の讒言の言葉を聞きながら黒猫が目を開いた。
だけどすぐに顎を引いて
「…それは、別れて欲しいってこと?
だったら答えはNoだぜ?」
低く囁いて、ちょっとだけ怒ったように目を吊り上げる。
勝気とも呼べる少年の声に、その言葉に―――
黒猫の話したいことって言うのが
別れ話でないことを悟った。



