最後の一文字を言いかけたとき
ガラっ
「上野先輩?お電話ですよー」
準備室の引き戸が突如開いて、浩一は慌てて私から手を離した。
私も思わず慌てながらもぱっと距離をとる。
「上野先輩?」
入り口のすぐそばに置かれたラックのお陰か、浩一を呼びにきた後輩学生に私たちの姿は見られなかったようだ。
「あ、ああ。今行く…」
浩一は私の姿を隠すようにそそくさと出入り口に向かい、慌しく出て行った。
戸を閉める間際、
ちらりと私の方を気にしたようだけど
私はその視線に―――気付かないフリをした。
ドキン、ドキン…
心臓がさっきの衝撃を和らげることなく今更ながら暴れだした。
私は心臓の辺りをそっと押さえてケータイを拾い上げた。
黒猫からの着信は
―――いつの間にか途切れていた。
バカな私。
浩一がずっと私に何を伝えたかったのか―――
たった今、気付いた。
浩一の気持ちにちっとも気付いてなかった。
だって私たち親友じゃん?
親友なのに―――…
そう思っていたのは
私だけだった。



