カッ…!…ン
乾いた音を立ててケータイが床に落ちる。
その衝撃にも耐えて、黒猫からの着信は鳴り続けている。
私は呆然としながら床に転がったケータイを見つめた。
黒猫とお揃いのバイオハザードマークが入ったマウスのストラップが引っくり返っておなかを見せている。
ぎゅ
力を入れて浩一が私の肩を抱き寄せる。
浩一に抱きしめられるのははじめてだ。
四年間も付き合ってきたってのに―――浩一の体の感触をはじめて直に感じた。
黒猫よりもがっしりとした骨格で、発達した筋肉は成長の完成版だった。
黒猫のおひさまと柔軟剤の香りとは違って、ほんのわずかな香水とタバコの匂い。
いつか嗅いだ―――その嗅ぎなれない“男”の香りに戸惑い、
ただ、ただ―――驚いていた。
「……こ…いち…?」
ぎこちなく身じろぎして浩一の胸元から逃れようとするも、浩一はさほど力を入れてないだろうに私の動きをあっさりと封じ込める。
だけどその男らしい動作とは反対に私の頭を抱き寄せる手付きは、まるで宝物を扱うかのように
慎重で繊細なものだった。
床に転がったケータイは鳴り続けている。
―――……黒猫。
浩一……―――?
「俺―――朝都がす…」



