私の質問にまたも浩一が目をぱちぱち。
「…いや…違ぇって…」
浩一は所在なげに目をきょときょとさせて、実験器具が並んだラックに手を付いた。
横顔に僅かな翳りを浮かべている。
浩一の白衣姿なんて見慣れているはずなのに、その物憂げな仕草が妙に大人っぽく見えた。
…やっぱり…
あの人に恋してるんだ…
直感でそう感じ取って、
「好きになるのは自由だけど、あの人浩一のことを恋愛の対象としてみてないよ、きっと」
親友にこんなこと言うのは気がひけるけど、何もしないよりはいいかも。
アドバイスをして最終的に浩一が判断したなら私は何も言わない。
もういい大人なんだし。
浩一は私の発言に怒り出したりはせずに、ちょっと驚いたように目をまばたいてこちらにゆっくりと顔を向けた。
「どうしてそんなことを?」
逆にそう聞かれて、今度は私の方が戸惑った。
嫌味や皮肉ではなく、本当に疑問に思ってるような口ぶり。
「…いや。えっと……あの女の人、溝口さんのライバル会社の営業なんだって。
こ、浩一を利用しようとして自分んとこの機械を教授に売り込むつもりだって。
きれいな人だとは思うけど、あんまり親しくなり過ぎると業者との癒着に繋がるよ」
こうゆうときって何て言ったらいいか分からない。
でも変な探りを入れるより遠まわしな忠告より、ストレートに警告した方が早い。
私の言葉に浩一は目を開いて唇を引き結んだ。



