「上野さんはあの女狐に騙されてるんっスよ!あの女、契約のためならどんな卑怯な手も使うってことで有名ですからね」
卑怯な手…
「そ、それって体を売るってこと…?」
ちょっと声を潜めて聞くと、溝口さんは私と同じように声をひそめて「そう言う噂もあるってことです」と眉間に皺を刻んだ。
分かんないなー…
「さっきも言いましたけど浩一にそんな権限ありませんよ?
溝口さんがあの教授に色気で迫ったほうが早いじゃないですか」
まぁ結構なイケメンだし?中身チャラいし、ホストの仕事してると思えばいいじゃないですか。
とはさすがに言い出せず思わず口を噤んだ。
すると溝口さんは
「ちっちっち」
私の前で指を振り、
「朝都さん、俺たちはこのときこの場で終わらせるわけにはいかないんですよ。
浩一さんは院生になってこの大学に残るわけですし、教授のお気に入り。
さらには成績優秀(ああ見えて)の彼がこの大学の未来を担ってるわけなんですよ」
なるほど。
早いうちからツバつけておこう作戦か。
溝口さん…チャラいけど、爽やかな顔してて……でも中身黒いな…
「研究室に行けば浩一に会えるじゃないですか。わざわざ私を介さなくても」
ちょっと面倒そうに表情を歪めると、
「あのライバル会社の女狐がべったり上野さんに張り付いてるんですよ!
俺と朝都さんみたいな関係です!」
はっきりきっぱり指差されて、私はちょっと白い目。
「溝口さん、変な言い回しはやめてください。
私はあなたとは無関係です」
きっぱりはっきり言ってやると、
「…つ、冷たい…」
溝口さんは一人ガーンとショック。
でも、まぁ分かりやすい説明っちゃ分かりやすいな。
「怖いのは俺たちの関係を築き上げるのに、俺は三年ほど掛かったって言うのに、あの女はそれをたったの三日でしたってことです」
溝口さんは真剣。
だから変な言い回しはやめてくださいって。



