「そう言えば、この間お父様と偶然会ってね、ご馳走してもらっちゃった」


“お父様”と言うのは、私を家庭教師として雇ってくれた人。黒猫のお父さん。


お母さんはいない。随分前に亡くなったとか。


「知ってる。あいつも言ってたよ。でも、あんたああゆうおっさんがタイプなわけ?」黒猫はそっけなく言う。


てか“あんた”って年上女の…それも先生に向かって言う台詞?もう慣れたけど。


「別に。でも落ち着いてて大人だし」


「……ふうん」黒猫はそっけなく答える。


「あんたさっきから何が言いたいの?」





「別に……、あんたが俺の義母になったら嫌だなって思ったから」






黒猫の言葉にあたしは吹きだした。


「ないない!だってお父様は私より一回り以上も年上だよ。私なんて相手にしないって。


でもあんたも意外に可愛いところあるのね。お父さんを私に盗られたくないって思ってるんだ」


と悪戯っぽく微笑んだ。


黒猫はその答えに動じずに、







「ばっかじゃねーの」とつっけんどんに答える。