黒猫の色っぽい赤い舌が指先を舐める。


少年のくせに―――


ネコなのに…



その仕草は大人の男の色気をかもしだしていて、ドキリと胸が打つ。


バイオハザード変態ウィルスのせいだ…




ううん



ウィルスがなくても私は―――


黒猫と






倭人と―――…




「キスしたい」





黒猫の頬にそっと手を伸ばすと、黒猫はちょっとびっくりしたように目を開いて、


すぐに口元に手の甲をやると、視線を泳がせながら



「バカ朝都…」とぽつりと漏らした。


へ……バカ…??


私は怒る…というよりも意味が分からなくて目をぱちぱち。





「俺が先に言おうとしてたことをー」





黒猫はちっちゃな声で答えて、私の頬はかっと熱くなった。


「…き、キスしたいと思ってたの?」ちょっと聞いてみると、


「そりゃそーだ。高校男子は色んな意味で食欲旺盛だからな」


と黒猫がさらり。


な、食欲とな!


『朝都の手料理の次は、朝都が食いたい』


とか!?


ドキドキして目をまばたいていると、


黒猫の手が私の頬を冷ますように優しく包み込む。


それは下心と言ういやらしい手付きではなく、どこまでも優しくて―――あったかい。


手のひらを同じ温度になじませようと黒猫がそっと私の頬を撫で上げ、私はゆっくりと瞳を閉じた。





もう…


食べちゃってください。





黒猫のおひさまの香りが近づいてくる。


唇と唇が触れる瞬間…


黒猫の影になって後ろに手をついていた私がちょっと手をずらした瞬間



~♪


オーディオコンポからメロディが流れて、


黒猫の唇は私の唇に触れることなく






直前で止まった。