口を僅かに開いて、お魚ビスが入れられるのを待っていると


黒猫は私の口のまん前でスルー。


「やんないよー。これ、俺の」


と意地悪そうに笑って、ぱくり。


「うま♪」


ともぐもぐ。


く……


意地悪ネコめ!


「そんなガキっぽいことして。年上のおねーさまをおちょくってんじゃないわよ」


ちょっと怒ったフリをしてぷいと顔を背けてみる。


「何?スネてんの?」


子供扱いしたことに腹を立てたようではなく、黒猫はマイペースに私を覗き込んでくる。


それでも私は顔を戻さなかった。


益々ツンと顔を逸らして「ふん」と言ってみる。


これじゃどっちが子供か分かんない。


「機嫌直せよ。ほら、これやるから」


黒猫がお魚ビスのさきっちょで私の頬をつついてくる。


ちらり、と横目で見ると


「ん」


さらにお魚ビスを頬に突きつける黒猫。


まるで飼い猫に「しょーがねぇな。やる」と言われているようで、益々かっこのつかない私。


でも


年上のおねーさまを翻弄してるのはこれまでよ。


「隙あり!」


私は黒猫の手からお魚ビスを全部奪って口に入れた。


ボリボリ…


したり顔でお魚ビスを噛み締めていると、黒猫はちょっと呆れたように吐息を吐いて


でもすぐに、ふっと頬を緩めて私の口元に手をやる。


黒猫のあったかい指先が私の唇の端をそっとかすめ





「欠片。ついてんぜ?


あんたときどき子供っぽくて可愛い。



これじゃどっちが飼い主か分かんねぇな」




そう微笑んで、指をペロリと舐めた。