すぐそばにあった大きな木を壁代わりに逆立ちした黒猫。


逆さになった黒猫が僅かにはにかみながら笑うと、




「こーやって見ると




世界は変わる。




汚い世界もきれいに見える。



涼子さんとマウスの人―――きっと幸せになれるよ」




黒猫―――…


さっきの溝口さんの告白、どっかで聞いてたんだ。


逆さになった黒猫。


相変わらずやることや発想が子供みたいで可愛いケド



でも


その言葉で私はいっぱい救われた。





私だけじゃない。溝口さんも、みけネコお父様も―――涼子も



私にとっては黒猫はまだ仔猫で―――



小さな存在で、でも大きな愛に変える術を持っている。





…そう感動したのはつかの間。



無邪気な少年のような笑顔を浮かべていた黒猫は、さっきまでの可愛い顔から一転


にやりと口の端に笑みを浮かべると、


「今日はさくらんぼ柄。かわいーね♪」


さくらんぼ柄…?


考えてはじめて私は顔を赤くして思わず後ずさった。


「ちょっとぉ!さりげなく下着を見たわね!!!」


「ひらひら可愛いスカートはいてる朝都が悪い」


と、またも私のせいにされてるし。


「よ」


黒猫は短く掛け声を掛けて元に戻ると、


すすっと私の耳元に口を寄せて、悪戯っぽく笑う。





「俺の隠れ特技。チェリーの茎を口の中で結べんの」







黒猫は最後の最後に、



“男”になる。