「え…えっと…」涼子は戸惑った様子で顔を真っ赤にさせている。
まるで溝口さんが差し出したバラのような色を頬に浮かべて、それほど化粧をしていない涼子に天然チークがきれいに乗っていた。
私も思わず赤面するほどのロマンチック(?)な出来事にドキドキ。
…してる場合じゃないって。
私は涼子の腕を取って彼女を立たせると、
「ほら。
あんたもちゃんと返事しなさいよ。
逃げてばかりじゃなくて、ちゃんと溝口さんに向き合って」
私がちょっと涼子の背中を押すと、涼子はよろけて溝口さんの胸へ。
「ちょ…ちょっと、朝都!」と
慌てて振り返りながら戸惑ったように眉を寄せる涼子。
「いい加減にしなさい。じたばたするのは終わり。
もう私たち子供じゃないんだよ。恋を知ったばかりの小娘じゃないんだよ。
自分の恋ぐらい、自分で決着付けて。
決めるのは自分」
私がちょっと声を低めて強く言うと、涼子は目をぱちぱち。
溝口さんもびっくりしたように目を開いて、私の方を窺っていた。
私の睨みつけるような視線に涼子が戸惑ったように眉を寄せていたけれど
やがて―――
ひらり
白衣の裾を翻すと
「ありがとうございます……あの…こんな私でよければ、是非」



