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あれから三日後。
一日の講義を終えた私は涼子に誘われて研究室へ行く前に、構内のカフェテリアでお茶。
涼子は研究を途中から抜け出してきたのか、白衣姿。
「溝口さん、あれから連絡がぱったり。あんなにしつこかったのに…諦めたのかな」
と涼子はため息を吐いてスマホをずいと私の前に差し出した。
パールピンクの可愛いスマホは女子力高めの涼子に良く合ってる。
私なんてそっけない白色ケータイだしな…
涼子は溝口さんじゃなくてもきっといい恋できるよ。
なんて心の中で言い訳。
「気になるならこっちから連絡すればいいじゃん」
いつかの逆バージョン。前は連絡を寄越さない黒猫に涼子がアドバイスしてきたんだった。
「したよ。電話もメールも。いい加減返事をしなきゃ、と思って…
でも電話にも出ないし、メールも返信がない。
やっぱり遊ばれてただけかな」
涼子は深いため息を吐いて紅茶を一口。涼子の吐息が香り高い紅茶の香りを運んできた。
秋の空に香る紅茶の香りは、どこか渋さを含んでいた。
涼子が何て返事をするのか―――それを聞けなかった。
溝口さん…そう言えばあれ以来会ってない。
新品の商品は研究室に置いてあったから、納品はあっただろうけど、私も避けられてるのかな…
考えたら私、結構ひどいこと言ったよね。
溝口さんじゃなくてもあんな風に言われたら、誰だって顔を合わせ辛くなるよ。
ああ…
後先考えずついあんな風に言っちゃったけど、考えたら涼子と溝口さんの問題だ。
私は、何てことをしたんだろう…
とちょっと自己嫌悪に陥っていると、
「誰あれ?かっこいい~!♪OBかな?」と同じカフェテリアにいた女の子たちの黄色い声が聞こえて、
「涼子さん、ここにいらっしゃったんですか」
と走ってきたのだろうか、息を切らしながら溝口さんが登場。



