溝口さん、溝口さんは自信がないって言ったけど、
誰だって人を幸せにする絶対的な自信なんてないんだよ?
それはいつだって手探りで、
だけど愛する人が居れば、どんなことでも一生懸命になれる。
「自分が幸せにする」じゃなくて
「一緒に幸せになろう。
あなたと幸せになりたい―――」
だよ。
人は人の手を取り、協力し合って同じ道を歩き、同じ目的を持って、同じ未来を目指す。
その道のりがどんなに険しかろうと、どんなに困難であろうと
好きな人と一緒だと乗り越えられる。
乗り越えた先がゴールとは決められない。
そもそもゴールなんてどこにもないのだ。
だから溝口さんも、涼子のことを心から好きであるのなら、
怖がらずに彼女の手をとって。きっと涼子も一緒に歩くことを望んでいる。
それが幸せ。
手を取り合って―――
このときの私はこんな風に思ってたけど、でもこの先、
いくら気持ちが繋がっていようと、いくら好きだろうと、私と黒猫の手は離れて―――
ずっとずっと…うんと遠く離れて
手を伸ばしても届かない未来が待っていたとは
予想すら
していなかった。
大好きだよ、倭人。
君の手を
君の隣で
ずっと握っていたかった。
―――
―
今は―――
いくら目を凝らしても、いくら探しても
君の姿は私の瞳に映らない。



