そのあと先輩の院生が研究室に来たから溝口さんの看病(てかすぐ傍で点滴を見るだけ)を変わってもらった。
溝口さんは、涼子になんて言うだろう。
涼子が悲しむことを分かっていて、それを推奨したと知ったら涼子は私に怒るかな。
だって涼子はきっと
溝口さんのことを好き―――だから
あんな風に迷ってる涼子をはじめて見た。悩んで考えてはいたけれど、涼子の目は恋をしている視線だった。
だからあえて離れるように言った私をきっと恨むだろう。
涼子……ごめんね。
そんな想いで沈みながら、帰りの電車をホームで待ちながらケータイを取り出した。
無性に黒猫の声を聞きたくなったのだ。
何だっていい。
くだらないバカみたいな会話だって。
ただ、
声を―――聞きたい。
繋がったケータイから聞こえた黒猫の言葉は『もしもし?』もなしに、
『しけたツラしてんね、おねーさん』
だった。
私は目をぱちぱちさせて辺りをきょろきょろ。
黒猫…近くに居るの?と辺りに視線を彷徨わせていると、
線路を挟んだ向こう側のホームに黒猫が立って、同じようにケータイに耳を当てていた。
「……何で…?」
思わず聞くと、
『今着いた。デートのお誘いにきたのー。
メールしてからにしようかと思ったケド、宅急便でお届けしようかと思ってサ』
と黒猫は冗談ぽく笑う。
遠目でもわかる。無邪気な笑顔が。
太陽みたいな明るくて可愛い笑顔が―――
『……てのは嘘。昨日…ちょっと俺マウスの人(溝口さん)に言い過ぎたから、
朝都に感じ悪くなってたらヤだなーって思って謝りにいこうかと思った』
黒猫は―――ただ純粋だ。
私のことをただ、ただ
まっすぐに純粋に想ってくれる。
飼い主の私が、飼い猫を守らなきゃいけない立場なのに―――
私のネコはいつも私を守ってくれる。
あの、ふわふわの毛のように、包み込むような優しさで。



