黒猫―――…?
いや、あいつは自信とかそういう以前の問題で…
「恋愛と結婚は別って。あれ、不甲斐ない俺のいい訳です」
溝口さんは顔を覆ったまま淡々と喋る。
「何でも知って経験をふんだ大人ぶって、
結局は逃げてるんですよね」
とつとつと語られる溝口さんの言葉に、私は何も返せなかった。
「相手の人生背負う覚悟ができない、って言うか……前の彼女のときはそうでした。
…最初は『アキヨシと結婚したいな~、ずっと一緒にいたいな~』って言葉が嬉しくて可愛かったけれど、
マジに『いい加減はっきりさせてよ!』て迫られると、その気持ちが重くなっちゃって。
彼女は“俺”じゃなくてただ単に“安定した生活”を手に入れたいだけじゃないか、とか色々考えちゃって…」
重い…とか。女にとっては一番聞きたくない言葉だ。
「…すみません!俺、朝都さんの前でこんな話…」
ホントだよ。私を女扱いしてない証拠だな。
まぁ女扱いされても困るけど。
ちょっと吐息をついて近くの丸椅子を手繰り寄せながらベッドの脇に腰を降ろすと、
「まぁ分からないわけでもないですけど?」
私だって『俺と研究どっちが大事なんだ!』って迫られたこと何回かあるし。
その度にうんざりしてた。
「すみません…なんか朝都さんと居ると楽って言うか…」
「それ、黒…じゃなくて倭人にも言われました」
でも黒猫は“楽”を“好き”に変換してくれた。
私が研究漬けで連絡しなくても、あいつは持ち前のマイペースで会いにきてくれた。
ん??まてよ?
『楽(ラク)』の間に“I”を入れると、ライクだ!♪
I Like ASATO☆
ってLikeよりLoveの方がいいって。
こう見えても一応女ですから。



