点滴を打たれた溝口さん。
さっきより顔色悪くなってる気がするんだけど。
「真田くん、彼を少しの間診ててください。私は会議中だったのでね」
カーネル教授はまたものんびり笑い、短い腕を後ろで組んで研究室を出て行ってしまった。
待って!ケンタッキーおじさん!フライドチキン注文するので私を一人にしないでっ
とワケの分からないことを(心の中で)喚きながら
結局研究室に残された私。
ついつい溝口さんを研究室に連れてきちゃったケド
「「………」」
どーしてくれる!この微妙な空気!
私は横たわっている溝口さんから慌てて目を逸らした。
後ろを向いた私に溝口さんが
「………あの…昨日はすみませんでした…その…俺、失礼なこと言って」
と小さな声で私に話しかけてきた。
私が振り返ると溝口さんは眉を寄せてぎこちなく微苦笑を浮かべていた。
溝口さんはやっぱり大人で―――
キマヅイだろうに、彼だって言いたいことがあるだろうに…
疲れてるうえに風邪だからだろうか、いつもの溝口さんじゃない…誰か他の人を見てる気がしたけど、
でも
こんな弱ってる溝口さんも
―――溝口さんなんだ。
「…私の方こそ、ごめんなさい。ついかっとなって…」
頭を下げて腰を折ると、溝口さんが慌てる気配があった。
「いや!本当に……悪いのは俺なんで…」
言いかけて口をつぐむ。
「ホント……悪いのは俺。不甲斐ない俺のせいなんです…」
そっと顔を上げると溝口さんは両手で顔を覆ってくやしそうに口元を歪めていた。
「俺、自信がないんです。好きな人を幸せにする自信が―――
黒猫くんみたいなまっすぐな自信が―――」



