「イマドキの高校生だってそうでしょ?
キミだって将来を考えて付き合う?付き合った相手と結婚まで考える?
楽しければそれでいいでしょ?」
溝口さんはやや投げやりと言った感じで黒猫にそう言い切ったあとに私を視界に捉えたのか慌てて口を噤んだ。
バツが悪そうに前髪を再びぐしゃりと掻き揚げて俯く。
「いや、そう言う意味じゃなくて…」
「じゃ、どうゆう意味なんだよ」
黒猫の口調も悪くなる。
私は慣れてるけど、溝口さんとはほとんど初対面みたいなもんだから。
そんな喧嘩腰はダメよ。
とちょっと思ったけれど、
その声が驚くほど低くて怒気を孕んでいたことに気付いて―――私は何も言えなかった。
「俺はあんたとは違う。
俺は朝都と結婚したい。
告ってオッケー貰って、そしたらまた気持ちが強くなった。
朝都以外考えられない。
毎回そう思ってるよ」
結婚―――したい……
場違いだとは思ってもその言葉はやっぱり嬉しい。
「結婚?だってキミまだ高校生でしょ。
法的にもまだ婚姻できない年齢で。
結婚はままごとじゃないんだよ?」
溝口さんが口の端で笑う。
嫌な笑い方だったけれど、きっと売り言葉に買い言葉だ。
普段の溝口さんを知ってるから。
と言うかそう思いたい。
涼子が悩んでいる相手が誠実な相手であってほしい―――と、それが私の
本心だ。



