「あ。マウスの人だ」
と黒猫だけがマイペース。
マウスの人…てね。名前覚えてあげてよ。彼は溝口さん。
っても私も溝口さんの下の名前はじめて知ったばかりなんだけどね。
そ、そんなことより……スーパーの買い物袋を提げて一緒のマンションに入ってくとか…
「アキヨシの彼女?」と女の人が不思議そうに聞いてくる。
その質問を無視して私は思わず溝口さんににじり寄った。
「その人と同棲!?
涼子に言い寄ってたのに
涼子は遊びだってことですか!」
涼子はあんなに悩んでたのに。
思わず駆け寄って溝口さんを問い詰めると、
「アキヨシ。何か勘違いされてるみたいよ?」
と女の人が同情を浮かべてゆっくりと歩いてきた。近くで見たらやっぱり美人だった。
化粧品屋のおねーさんみたいな。溝口さんより年上っぽい。
って、そんなことどーでもいいし!
「溝口さん!」私が溝口さんに向き直ると、溝口さんは目を開いてたじたじ。
「どっちの溝口かしら、私も溝口なんですけど」女の人はほがらかに笑う。
同じ名字……てことは!この人まさかまさかの既婚者!?
「姉ちゃん!変な言い回しはやめてくれよ!」
溝口さんが慌てて
え……おねーさま……?
私は目をぱちぱち。思わず溝口姉弟を見比べる。
「お、おとーと!?」
「…似てると言えば似てる」黒猫がまじまじと二人を眺め、
「そ。おとーとよ。それよりリョウコさんて誰?詳しく聞かせてくれない?」
とおねーさんはにこにこ笑って私の腕に手を絡ませてくる。
「そこの可愛い彼も」と黒猫の方を目配せしてイタズラっぽくウインク。
と、い……色っぽい…だけに
「お話ししましょー」
黒猫はあっさり承諾。
黒猫、また「きれーなおねーさんに」フラフラと。
でも私もどうゆうことか気になるし。



