結局その後はパスタとピザやサラダなんかを頼んで、楽しく食事をしながらカクテル(黒猫はジンジャーエール)を飲んで
黒猫の社会勉強は終わった。
ぶ…無事終わって良かったーーー!!
仲が良いのか悪いのか分からない親子ネコの面倒をやっぱり一人で見るのは大変。
つ、疲れた。
お会計を済ませてお店を出るときわざわざみけネコお父様がお見送りにきてくれた。(通常ならお店のスタッフ)
「今日は来てくれてありがとうね。朝都ちゃんが来てくれてみんな嬉しそうだったよ」
とにこにこ。
「朝都ちゃん“だけ”で良かったのに」
と爽やかな営業スマイルを浮かべながら最後まで攻撃の手を緩めないみけネコお父様。
私はまたもはらはらして黒猫をちらり。
黒猫はちょっとお父様を睨んで、それでもそれ以上は何も言わなかった。
私の後ろに隠れるようにしてちょっと腕を引くと
「帰ろうぜ」
とちっちゃく言って後ろを振り返る。
はいはい。帰りますよ。
まったく、ホントにマイペースなんだから。
「あんた一人でおうちに帰れるの?他の縄張りのネコと争って帰れなくなっちゃうわよ」
ちょっと言ってやると、
「俺が番ネコしなきゃ、新しい飼いネコ見つけられても困るし」
とそっけなく言う。
「はいはい。私はあんたの飼い主だもんねー」
ちょっと言ってやると
「朝都は俺の
彼女」
倭人の―――彼女……
「おー。いっちょ前の男の台詞吐いて。親として恥ずかしいよ」
とみけネコお父様の方が何故か照れたように口元に手をやる。
「倭人。ちゃんと“彼女”を送ってやれよ」
みけネコお父様が軽く手を上げると、
黒猫は小さく頷いて前を歩き出した。
「門限は11時だからな!」とみけネコお父様がしっかり言い置いて。
「11時半」
黒猫が振り返り忌々しそうに眉を寄せたけど、でもすぐに淡い笑みを浮かべる黒猫。
サンセット後の
夜のネオンの中、その微笑は今まで見てきた少年の顔とも“男”の顔とも違う―――
“息子”の顔だった。
口では「チャラい」って言ってたけど、お父様のこと
本当はちゃんと認めてるんだね。
黒猫の社会勉強は
どうやら成功したらしい。