カクテルグラスに注がれた液体は乳白色をしていて、通常ならグラスの口に塩を乗せるのに
みけネコお父様は代わりにイチゴのカットをグラスの縁に挟み込んだ。
「“ステキな女性”へのオリジナルカクテル
“アサト”
お待たせいたしました。こちらのお客様からです」
みけネコお父様はグラスを私の前に差し出し、ちょっとだけ真剣な顔で黒猫の方を目配せ。
へ……
びっくりして目をまばたくと、みけネコお父様はスマートな仕草でウィンク。
う、ぅわ!
キザ過ぎるけど、何故だかすごく似合っちゃうし。違和感なし。
よく見るとグラスの縁に飾られたちっちゃなイチゴのカットが赤いハートのように見えた。
うわぁ。オシャレだな…とちょっと感動。
「……キザなヤツ…」
黒猫がすぐ隣でぼそりと呟き、それでも照れくさそうにちょっと苦笑い。
そしてすぐに口元を押さえて
「ごめん、ちょっとトイレ…」と言って席を外してしまった。
みけネコ店長は店の奥にあるお手洗いに向かっていく黒猫を見てニヤリ。
どうしたんだろ急に…具合悪くなったのかな…とちょっと心配になったけど。
「あいつ、今すっごい照れてんの♪ホント面白いヤツ♪見てて飽きないよね?」
…お、お父様…
せっかくいい雰囲気が台無し。
あれが照れてる??…のか。うーん、私には分からん。
黒猫が居なくなっちゃって私はカクテルを一口。
パンチのあるマルガリータの味よりもそれはちょっと甘くて、
「シロップ入れてみたんだ。朝都ちゃんをイメージして」とみけネコお父様はにこり。
「その白い色は―――Chat Blanc
“白猫”をイメージしたんだ。
あいつ、朝都ちゃんを最初“白猫みたいなヤツ”って言ってたから」
白猫―――…?



