みけネコお父様は言いたいことだけ言って満足したのか、シェイカーのカップを被せると両手でしっかりと握った。
「まぁ僕にとってはいつまでもガキみたいなヤツで時々…いやほとんど毎日腹が立つヤツだけどさ
それでもやっぱり
僕の可愛い息子には変わりないんだよね」
みけネコお父様はシェイカーボディーのトップを押さえ、シェイクの体勢に入ると、
「小さい小さいと思ってて、そんな小さな息子をいつまでも甘やかして傍に居たいと思ったケド、
支えてやりたいと思ったけど、
いつの間にか僕の手を借りずに、
ステキな女性に恋をして
親も知らないところで“大人”に成長していくんだよね」
カラカラッ…カチャカチャ…
みけネコお父様がシェイカーを振って、ボディの中で氷がぶつかる音が小気味良い音を立てた。
ギャルソン風のベストと長エプロンのバーテンスタイルはやっぱり小粋なみけネコお父様にすごく合っていて、
シェイカーを振るときの真剣な眼差しとか、キレのある手の振りとか
女の子たちが騒ぐ理由が分かるけど、
でもみけネコお父様がモテる理由はきっと―――
どんな場合でも、どんな人でも相手の長所を見つけて
短所も含めて、すべてを受け入れる寛容な心があるからだ。
私はそんな風に思った。
黒猫もきっとそう思ったに違いない。
みけネコお父様の呟きみたいな言葉を黒猫は一言一言記憶に叩きつけるように耳をすませて
その姿を真剣に見つめていた。



