黒猫がじっとその姿を眺める前で、みけネコお父様は手馴れた手付きで塊の氷をアイスピックで削っていく。
「イケメン店長だって?マジでウケるんですけど。
家ではふつーのオヤジなのにな。かっこつけやがって。
家では一日中パジャマだし?トイレに新聞持って行くし?
休みの日は昼まで寝てるんだぜ?」
黒猫は私に笑いかけてきて、
グサッ
みけネコお父様は普段ではありえないミス…氷を規定の大きさの半分に割ってしまった。
黒猫……こんなときにまたも暴露。
額に青筋を浮かべたお父様を見て私ははらはら。
みけネコお父様は割れた氷をぽいっと放って、
「僕の息子は脱いだものその辺に散らかしてくし?
風呂から上がったら半裸でうろうろしてるし?いつまでもガキだよね。
あげく外で“彼女”に手を出すし―――」
みけネコお父様が反撃に出て新しい氷をカット。
その手さばきは相変わらずの見事なものだった。
半裸でうろうろ…って。黒猫おうちでもそうなのね。
それにしても…嫌味たっぷりだな。
“彼女に手を出す”ってのは半分は私にも非があるわけだし。
それに関しては身が縮こまる思いだ。
ちらりと黒猫を見ると、黒猫は忌々しそうに眉間に皺を刻でいた。
だけどあくまでその“嫌味”は対:黒猫みたいで、
「朝都ちゃん、こいつねー。僕に君のことあれこれ聞いてきたんだヨ。
彼氏居るのか、とか。何で家庭教師のバイト引き受けたのか、とか♪
普段他人のことに無関心なのに、あれこれ聞いてきたからすぐにピンときたけどねー♪
倭人わかりやすっ♪」
みけネコお父様はシェイカーのボディに氷とメジャーカップで計ったテキーラ、ホワイトキュラソーを入れて、私の方をにこにこ。
「ば、バラしてんじゃねぇよ!」
歳の功か?
みけネコお父様の方が一枚上手だった。



