「おねーさん、この人にテキーラサンセット、お願いします」
黒猫がカウンターの向こう側に居る女の子を手招きして、
「『あちらのお客さまから』って言うの、ちょっとやってみたかったんだよね」
と黒猫はさっきの甘い雰囲気を仕舞いこみ、またもマイペース。
でも照れ隠しなのだろうか、はにかみながらちょっと顔を逸らすのが…
『ちょっとやってみたかった』発言が、
可愛いし。
「待って。サンセットじゃなくて、マルガリータにして」
私が女の子に言うと、隣で黒猫が目をぱちぱち。
「シェイクが見たいんでしょ?サンセットもビルドだから。
お父様に作ってもらおう?
とびきりおいしいお酒ができるよ」
私が黒猫の方を振り返ると黒猫はまたも目をぱちぱちさせて、
「うん。サンキュー」
とちょっと頬を緩めて笑った。
女の子が厨房とカウンターを行ったりきたりしてるみけネコお父様を呼ぶと、みけネコお父様がすぐに女の子の元にきた。
「朝都からマルガリータの注文です。お願いします」
女の子がシェイカーを手渡し、みけネコお父様はちらりとこちらを見る。
ちょっと訝しげに目を細めて私を…と言うより黒猫の方を眺めると
黒猫はまたもニヤリ。
「またお前は…何を考えている」
とみけネコお父様が黒猫を睨んだけど、
「別に?ってか客待たせんなよ。
早く作れ」
と命令してる。
黒猫……ホントに何を考えてるの?
頼んだのは私だけど、失敗したかな…
とちょっと私は焦あせ。



