「0.5だよ。あれは1にも入らん。
って言うかフったじゃなくて、フられたの」
法学部なんて医学部細胞病理学の私とは全然別世界の人間だ。
それまで全然面識なんてなかったのに、突然声を掛けられて構内のカフェテリアでお茶をした。
もう一ヶ月も前の話だ。
向こうは私のことを構内で何度か見て、気になっていたらしいけど、
『話してみるとイメージが違うって言うか…』
何だよ、それ。勝手にイメージして勝手に近づいて、それはないじゃない。
「てか私は砂糖でできてるとでも思ったんか」
タバコの灰をトンと灰皿に落とすと、
「まぁねぇ。見た目を裏切るよね、あんたは」
と涼子は面白そうに笑う。
「あんたはあれだ。そのタバコのメンソールみたいな感じ」
なんだそりゃ。
「全然分かんないんですけど」
「ハッカみたいな女ってこと。男みたいにさっぱりしてるのに、どこかくせがあるっていうか。
慣れるまで時間がかかるけど、慣れたらくせになる」
何よそれ。
「全然嬉かないんですけど」
「黒猫くんもさ~爽やかな匂いの煙に最初は興味津々かもしれないけど、近づいてみると煙が染みて涙でちゃうかもね」
うふふ、と涼子が気味悪く笑う。
まぁ。それなら??分からないわけでもないけど。
猫って好奇心旺盛だしね。
こんな女が―――物珍しいだけ、かも。



