Chat Noir -バイオハザー度Max-




「テキーラサンライズ、お待たせしました」


女の子が作ってくれたカクテルを受け取って、それを黒猫はしげしげ。


「ねぇあれやらねーの?振るヤツ」


黒猫がちょっと手振りをして、それがシェイクのことだと気付いた。


「これはビルド製法って言ってね、混ぜるだけなの。ちなにみこのオレンジジュースをレモンジュースに変えると


テキーラサンセットになるのよ」


と説明をすると、


「へぇ。奥が深いんだな」と黒猫はまたも興味深そうに大きなお目めをぱちぱち。


どうやら社会勉強…にはなってるみたいだけど、いらん知識だな。


知らなくても生きていけないわけじゃないし。


「シェイクが見たかったら店長に頼んだら?私はまだ見習いだからシェイカー振れないの」


女の子が申し出てくれて、私は『また余計なことを…』とちょっと額を押さえた。


「ふぅん、イイコト聞いた♪」


黒猫はまたもにやり。


そのうちに黒猫のジンジャーエールも届いて、私たちはとりあえずの乾杯。


テキーラ…飲みたかったのにちっとも味が分かんないし。


「サンライズってさ、なんか響きがいいよね」


黒猫は私の気苦労を知らずにマイペース。


「響き?」





「日の出ってことだろ?“夜明けのコーヒー”みたいで


そこから何かがはじまるって感じがしてさ」





よ、夜明けのコーヒーって、あんた意味知って言ってんの!


とちょっと目をぱちぱちさせたけど、



『何かがはじまる』って言葉にちょっとだけ感動した。



女の子が私に背を向けて他のお客さんの注文を聞いているのを確認すると、黒猫が私にちょっと顔を寄せて





「俺たち、まだはじまったばかりじゃね?



これからきっと―――楽しいこといっぱい待ってるよ」





そう囁いて、またも照れくさそうに顔を赤くした。


ちっとも味を感じなかったテキーラサンライズが急にまたも甘く感じて、私も酔っぱらってもないのに顔が熱くなるのを感じた。