みけネコお父様は目を丸めて口をぱくぱく。
「店長、お客様ですか?」
お店のカウンターから女性バーテンの一人が声を掛けて、
「あれ?朝都ジャン♪久しぶり~」とすぐに手を振ってくる。
「知り合い?」黒猫が聞いてきて、
「うん…前ここで一緒に働いてた。結構仲がいい子」と簡単に説明すると、
「俺、カウンターがいいな」と黒猫がさっさと歩き出す。
「ちょっと待ちなさい、倭人。お前はまだ未成年だろ?」
みけネコお父様が慌てて追って、店の外を目配せするも
「だからホゴシャを連れてきたんだ」
と、ずいと私の背中を押す黒猫。
わ、私はダシか……
「言っとくけど、俺が朝都に無理やり頼み込んで連れてきてもらったワケだからね。
この人最後まで渋ってたから」
ちゃんと説明してくれたけど。
「…す、すみません。働くお父様の姿を一度見てみたいって…」
私があせあせと説明を加えると、みけネコお父様は諦めたように吐息を吐き、カウンターに案内してくれた。
「言っとくけどうちは未成年にお酒出さないよ?倭人はジュースかノンアルコールね」
としっかり言い置いて。
それでも仕事に関しては真面目なのか、みけネコお父様はいつものそつのない動きでスツールを引くと「どうぞ♪」と私を席へ促してくれた。
「す、すみません」
恐縮してスツールに腰を降ろすと、
「サービスいいな。無駄に笑顔振りまいてんじゃねぇよ。キモ」と隣で黒猫がぼそり。
く、黒猫!何てことを!!
「始終無愛想より良いと思うけど?」
みけネコお父様が顔を引きつらせている。ここはお店だし、みけネコお父様も変なこと言えないみたい。
それを逆手にとってか、黒猫は楽しそうにニヤリ。
ああ、また一波乱ありそうだ。



