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みけネコお父様の経営するバーは黒猫のおうちから駅で二駅ほど。
割と高級な土地柄で駅前だし、立地条件は最高。だからか結構繁盛している。
家賃払って、約十人程居るスタッフを抱えてお給料払って、それでも利益が出てるから経営はうまくいってるみたい。
博物館のような洒落た建物の一階がバーになっていて“Chat Blanc”と名付けられた店名の看板がネオンで光っている。
Chat Blanc―――意味は“白猫”
ネコの形をした案内板が入り口に立っていて、今日のオススメメニューなんか書いてあるけれど、黒猫はそれをスルーして興味深そうに店の奥をきょろきょろ。
高い天井にワンフロアの半分ほどがテーブル席。もう半分がビリヤード台やダーツなんかできるような贅沢な作り。
プールバーみたいな本格的なものじゃないけど、軽く遊べる感じで結構人気がある。
そのテーブル席が平日まだ早い時間帯だと言うのに、三分の二ほど埋まっていた。
そのほとんどが女性客だ。
「いらっしゃいま……」
みけネコ店長がバーテンの制服のままにこにこ迎えてくれたけれど、私たちだと気付くと、
その挨拶が途中で止まった。
「…な!何で!!?」
聞いたこともない驚きの引っくり返った声に、黒猫が隣でにやりと笑ってる。
「よ。来てやったぜ♪
おとーさん」
黒猫の口からはじめて“おとーさん”なる単語を聞いた。
だけど計り知れない悪意を滲ませてるのは気のせい…じゃないよな…
ああ、ここに連れてきたの失敗だったかも。と早くも後悔。



