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私だって黒猫としたいと思う。
黒猫ともう少し先に進みたい。
みけネコお父様は今日は遅いはず。
土曜日だし、お店が一番混む日だから。そのあとスタッフミーティングもあるし。
後片付けなんかをしてお店を閉めると戻るのは、早くても深夜三時過ぎだ。
みけネコお父様のお店でバイトしてたからその辺のこと熟知してる。
すみません、お父様…
お父様がお留守のときを狙って
私は可愛い一人息子をたぶらかせるワルい女でございます。
でも、黒猫とワルいこと
したい。
「朝都、親父のウィスキー飲んじゃっていいよ。少しぐらい減っててもバレねぇだろ」
マンションのエレベーターの中で黒猫が言い出して私はぎこちなく笑みを返した。
黒猫…ふつー通りだな。
こいつに“緊張”の文字もないのか。それともやっぱり慣れてる??
もしかして部屋にこうして誰かを呼ぶのは初めてじゃない??
なんて悶々と考えていると、
「あー、少しぐらいってレベルじゃねぇか。さすがに半分もなくなってたらあいつだって気付くよな」
「ちょっとぉ!さすがにそんなに飲めないわよ!
それに今はウィスキーの気分じゃないもん」
ちょっと怒って黒猫を軽く叩くと黒猫が無邪気に笑った。
「じゃ、何の気分?」
「テキーラの気分」
ふん、と言ってやると
「何それ」
微笑を浮かべたまま、頭を引き寄せられて
ふいうちに
キスされた。



