「冗談だってバ」
ポコっと頭を軽くはたかれて、
「こんな真昼間からねぇ」と黒猫は苦笑。
へ……冗談…??
「まぁその気持ちに昼も夜も関係ねーけど。
やっぱいつでもしたいし?」
黒猫が真顔でさらりと言って、私はまたも目を丸める。
“したい”とかはっきり言っちゃう!?
黒猫は真顔だったけど、
「……」ちょっと口をつぐむと、またも頬をほんのり赤く染めてぷいと顔を逸らした。
「……すみません。ジョークです…」
消え入りそうなちっちゃい声でぽつりと呟き、私の手をぎゅっと握ってきた。
「…頭冷やそうかな。どこかに入って茶でも」
ぎこちなく黒猫が提案して、同じだけぎこちなく頷いた私。
お茶よりも今はうんと強いお酒…そうだな、テキーラをショットで一気飲みしたい気分だよ。
一気に酔っぱらえばもっと楽になりそうだ…
ってそれこそ昼間っからお酒のこととか私何考えてんだ。
服なんかのショップが立ち並ぶガラスのショーウィンドウに二人が手を繋いで歩く姿が映った。
ぎこちなく黒猫の横を歩く私。
その姿を見て
私…何、緊張してるんだろ…
ちらりと黒猫を見上げる。黒猫は遠くを見ながらまっすぐ歩いていて、その横顔を眺めながら
やっぱり黒猫は“男の子”であることを実感した。
可愛い少年みたいな顔してるのに、でも私の手を握る手はあったかくて、それでいて骨ばった“男”の手。
それを再確認して
そっか。私……黒猫の“男”の部分にドキドキしてるんだぁ。
と実感してしまった。
きっとテキーラを一気飲みしても、このドキドキは治まらないな。



