それでも短いエスカレーターはすぐに終わっちゃって、それを降りると、目の前には
大きなクリスマスツリーが飾ってあった。
きらきらしたオーナメントがたくさんぶら下がっていて、
「もーすぐクリスマスかぁ」
私の手を繋いでいた黒猫がクリスマスツリーを見上げてぽつり。
「クリスマスは一緒にケーキ食べようね。ケンタッキー買ってさぁ」
私が何も考えずに言うと黒猫が無言で私を見下ろしてきた。
私は笑顔をぎこちなく固めて思わず苦笑い。
わ…私年甲斐もなくはしゃぎ過ぎ?
「ぷ、プレゼントとか。何が欲しい?」恥ずかしさを隠すように明るく言うと、黒猫はまたも考えるように首を捻り
ちょっと身を屈ませると私の耳元に口を寄せてきた。
「朝都」
!
私は目を開いて口をぱくぱく。
「ま、それは冗談として~」
黒猫は意地悪そうに笑って背を正すと、改めて私を見下ろしてくる。
「クリスマスまで『待て』とか、犬じゃあるまいしねー」
そ、それはクリスマス前に!?ってことですか!
ちょっと目をまばたいて黒猫を見上げると、
「例えば今日とか?この後………とか」
黒猫は真剣な顔で前を向いて呟く。
「言っておくけど、ネコに『待て』は通じないよ?」
忘れかけてた。
黒猫はネコじゃなくて
“男”だってことを―――



