私たちエスカレーターでも会話ないし…
「よ、横にこないの?」思わず聞くと、
「だって朝都スカートだから」とすぐに返事がかえってきた。
スカート??
「下から見えるだろ?だから俺が壁。ガード」
壁―――……ガード…
確かに、一段下に立ってても黒猫の方が背が高いし。私は黒猫の影にすっぽり隠れてる。
「他の男に見せたくないの」
黒猫は「ガキっぽいかもだけどー」とまたもちょっと拗ねた口調。
ううん!ガキっぽくなんてないし!そうゆう気遣いは大人の男でもなかなかできないヨ!
って言う意味で手すりに乗せた黒猫の手の上に私は自分の手を重ねた。
「や、やっぱり、お、おねだりして…いい?」
ちょっと振り返ってそう聞くと、
「ここで?」と黒猫は目をぱちぱち。
「…うん。う…後ろから、ぎゅってして。あ、あのカップルみたいに」
ちょっと目配せしたけど、
ぅうわ!自分何言っちゃってんの!
恥ずかしすぎる!!!とすぐに後悔。
クールな黒猫はお外でそうゆうのはイヤだろうし。
「見せびらかしやがって」と黒猫がちょっとつまらなさそうに呟き、
でも次の瞬間、
ぎゅ
遠慮がちに私の腰に手が回りきゅっと優しく抱きしめられる。
私の顔の横に黒猫の顔がきて、黒猫はちょっと顔をすりすり。
黒猫はお外でいちゃつくのとか好きじゃなさそうに見えるけど、でも
「あーあ、もうすぐエスカレーター終わっちゃうな。ずっと続けばいいのに。
雲の上までずっとずっと。
そしたら朝都をずっとぎゅって出来るのに」
黒猫の可愛すぎる独り言に、私の頬が熱くなるのがわかった。
黒猫の言う通り―――
このエスカレーターがずっと続けばいいのに。
雲の上までずっと。
うんと遠くまで。



