「朝都~、電話終わった?ちっちゃいから風に飛ばされてない?」


と黒猫が冗談ぽく笑って部屋に入ってきて、私はその場でびくり。


黒猫もノートを眺めている私に気付くと、びっくりしたように目を開いて慌てて走ってきた。


バッ!


“日記”のその部分を手で覆うように慌てて隠して、


「見た?」


と、はっきりと顔を赤らめて聞いてくる。


「……う、うん。ごめん…見えちゃった。てっきりお勉強してるのかと…」


「一人で勉強するか、バーカ。そこまで真面目じゃねぇよ」


黒猫がいつになく早口に言ってノートを閉じる。


「人の日記見るとか悪趣味だし」


黒猫は顔を赤らめたままそっぽを向く。


「見えちゃったの。人じゃなくて飼いネコだもん」


私が反抗すると、黒猫は口を尖らせて私を見下ろしてきた。


「俺のご主人様は悪趣味デス」







「私の“彼氏”は超可愛いデス」







おかえしに言ってやると、黒猫は大きな目をぱちぱちさせて、それでもすぐに恥ずかしそうに顔を逸らす。


「可愛いってね、男に“可愛い”は褒め言葉じゃねぇっつの」





「私の“彼氏”は超……




かっこいい……デス」






ぼそりと言い直すと、黒猫がまたも顔を戻してゆっくりと微笑んだ。


私のおでこにこつんと額を合わせて黒猫が恥ずかしそうにぽつりと一言。







「俺の“彼女”は世界一可愛いくてきれーデス」