「ぐだぐだうだうだ、上等だ!こうなったらとことんあいつに悩んでやる!」
ぐっと拳を握ると、
『その息だよ。がんばれ朝都♪』
涼子が応援してくれる。
「ところで涼子の話って何だった?」
そう聞くと、
『やっぱり今はいいや。私ももう少し自分でぐじぐじうだうだ悩んでみる』
……涼子。
溝口さんとのことかな。
涼子も、がんばれ。
―――
―
通話を切って、私は黒猫のお部屋を通り抜けてリビングに行こうか、と思った。
けど、
その脚が黒猫のデスクの前で止まった。
デスクの上に白いノートが一冊置いてあって、締め切られていない窓から侵入した風がぺらぺらとページをめくっていた。
あいつ、お勉強してたのか、えらいえらい♪
と言う意味でちょっとノートを覗きこむと、
“10月X日。晴れ”
と見出しに書かれていて、私は目をまばたいた。
“朝都が言ってくれた。
人の記憶は永遠でないのだ、と。
だから記憶を記録として残すのだ、と。
だから俺は書くことにした。
このとき抱いた気持ちを永遠に忘れないように―――
朝都が好き。
大好きだ。
これからも二人の記憶を、二人だけの記録を作っていきたい”



