そんな“男”の部分にもドキンと心臓が音を立てる。
黒猫の顔が近づいて来る気配があって、私は再び目を閉じようとした…
けれど
ピンポーン
またもインターホンの音が。
「「…………」」
私たちは顔を見合わせて、黒猫は次の瞬間がくりと肩を落とした。
「どうしていつもいっつも邪魔が入るんだろうな」
「…邪魔だんなんて…」
私だって同じ気持ちだったけれど、さすがに来客者が玄関の外に居る手前そんなこと言えない。
「俺は朝都とチューしたかったの」
ぶすりと呟いた黒猫。
面白く無さそうに顔を逸らしてるけど…
ち、チュー!!
そ、そんなはっきりと!
ピンポーン
来客者は早々諦めるつもりもないのだろうか、しつこくインターホンを鳴らしている。
「はいはい、今行きますヨ!」
黒猫が不機嫌そうに立ち上がり、でもちょっと考え直すように私を見降ろすと、
私の頭をそっと抱いて前髪にまたもチュと軽いキス。
私はびっくりして思わず目をまばたいて黒猫を見上げると、
「これぐらいで勘弁してやらぁ」
とまたもちょっと顔を赤くして今度こそ玄関口に向かっていった。
お、おでこチュー…
飼いネコの優しいキスで、ご主人様はドキドキです。
でも次の瞬間、このドキドキが違う意味でドキに変わった。
「倭人ちゃん、良かった。居たんだねー。
病院からの帰り道にママがケーキ買ってくれたの。たくさんあるから亮ちゃんも誘って三人でさ」
と聞いたことのある声が聞こえて、手馴れた様子で廊下を歩いてくる気配がして
私は目を開いた。
カリンちゃん―――……



