「こーやってさぁ
付き合うってことは、
教師と生徒って言う立場からだったら見えなかった部分も知れるよな。
俺、朝都がそんなところにピアス空けてたなんて知らなかった」
急に言われて目をぱちぱち。
まぁ、そりゃそーだけど。
「教師と生徒じゃキスしないしな」
真剣な顔で言われて、私はぎこちなく頷いた。
き、キスとな!いきなり話が飛ぶなぁ。
何だか妙に気恥ずかしくて私はわざと明るく笑った。
「突然家に来たりとか、勉強じゃなくてもコーヒーよばれたりとか」
「こうやって手を繋いだり、顔を近づけてみたりとか」
黒猫はまたも微妙に私の言葉をスルー。
きゅっと私の手を握ってきて、言葉通り顔を近づけてくる。
キスされるかと思って思わずドキドキと身構えていると、黒猫は真剣な顔で私を真正面から見つめて
「親父はさ、普段チャラくて、見た目も中身もチャラいけど、
チャラい以外なにもんでもないけど」
黒猫、チャラい言い過ぎ。
「朝都と出会わせてくれたことには
感謝してる。
朝都が今、隣に居てくれることに―――感謝する
朝都が居てくれたから、関係ないこと考えなかった。
朝都が“忘れちゃうのは仕方ないことだ”って教えてくれたから、
気持ちが楽になった
無理するな
一人で抱え込むな
って、教えてくれたから」
黒猫―――……
私は黒猫の頬に手をあて、何だか私の方が泣きたくなって
それをごまかすように黒猫の体をぎゅっと抱きしめた。



