「あんたもこんなにちっちゃくて可愛い頃があったのね」
と、写真と今の黒猫を見比べてしみじみ。
「いきなりでかくなるかよ」
ついでに言うとこの赤ちゃん黒猫は、いかにも純粋で可愛いのに
どこをどーしたらこんな生意気に。
この仔猫が、“これ”にね……
う゛~ん…成長過程が気になる。
ちっちゃい赤ちゃん黒猫は一歳ってとこかな。短い手足を宙に投げ出しバタバタさせているようだ。
黒猫のお母さんが困ったように抱き上げている。
ああ、この頃からちょっとヤンチャ要素が??
「それ探してたら着信気付かなくてさー」
黒猫が二人分のカップを持って、私のすぐ隣に腰掛けてきた。
「お母さんの様子想い出せた?」
カップを受け取って聞いてみると、
「あんまり」
と返ってくる。でもその横顔はすっきりとどこか清々しいものがあった。
口元に淡い笑みを浮かべている。
「顔見れば思い出せるかな、って思ったケド考えが安易だった。
それでも写真見つけれて良かったよ。
これ、どこにあったと思う?」
写真を指で挟んで私にふらふらと見せてくれて、
「さぁ。私このリビングとあんたのお部屋ぐらいしか知らないし」
「親父の部屋。きっちりアルバム整理されてて、本棚にぎっしり」
黒猫が白い歯を見せて笑う。
「大事そーにしまってあるの。
親父が母さんからバレンタインのときにもらったカードとかも入っててさ。笑えた」
「お父様の秘密を勝手に見ちゃダメでしょ」
“めっ”と言う感じでちょっと怒ったフリも黒猫には通じない。
「おねーさんぶるなよ」
「私はあんたの五歳もおねーさんよ」
ちょっと言ってやると、
「嘘。朝都おねーさまのお陰。ありがとね」
いつになく素直な黒猫が
トン
と私の肩先に頭を乗せてきた。



