「溝口さんが何を聞きたいのか私には分かりますよ。涼子のことでしょう?」
早足で歩きながらそう聞くと、
「そうなんです……俺、どうやら避けられてるみたいで…」
「いきなりチューはまずかったんじゃないんですか?」
嫌味ったらしく白い目で溝口さんを見ると、
「あ、あはは~…ってか、何でそのことを!?」
と慌てた。
「そりゃするでしょう。女子だし、恋(?)バナとか」
「朝都さんが恋バナ!?」
私は溝口さんの失礼な発言に、彼の手から麻酔薬を奪って彼にブスっと注射して眠らせたくなった。
「とにかく、私は今自分の恋で忙しいので。
親友の涼子の話なら聞きますけど、あなたは自分でなんとかしてください。
大人でしょ!」
ビシッと指差して言ってやると溝口さんは諦めたのかガクリと肩を落として、足を止めた。
ちょっと冷たかったかな?
と思うも、私も他人の恋にかまけてる余裕なんてないのだ。
「朝都さんが“自分の恋で忙しい”って…明日は雨かな」
ぽつりと漏らした溝口さんの言葉に
おい、溝口!
麻酔薬攻撃を本気で考えた私(怒)
と言うわけで、傷心(?)中の溝口さんを置きざりにして、私は電車に飛び乗った。
私の可愛い飼いネコの安否を気にしながら。
黒猫!
待ってて!
今、私が駆けつけるからねっ!!!



