溝口さんと言い、どうしてみんなそんな方向に想像するの。
「朝都先輩の彼氏ってどんな人ですか?年下??同じ学校?」
いつもならそんなこと聞いてこないのに、浩一のことを想像してあれこれ興味が涌いたに違いない。
「私の彼氏はこーこーせ……」
言いかけて慌てて口をつぐんだ。
別に隠してるわけでもないけど、堂々と言えるような立場でもない。
「ごめん、私も用が出来たから帰るわ」
早口に言って逃げるように研究室を出る。
浩一の用ってもの気になるところだけど、今の私には黒猫の安否の方が気になる!
そんな想いで歩調を早めると、今度は溝口さんに鉢合わせた。
「あ、朝都さん!」
次から次へと……
「あ、あの頼まれてた麻酔薬届けにきたんですけど」
溝口さんは歯切れ悪く言って、私の隣に並んでくる。
何か言いたそうに口を開きかけたけれど、
「じゃあ研究室にお願いします」と被せて歩みを速めると、
「朝都さんは今日は研究室じゃ?」と慌てて私の後を追ってくる。
「私は緊急の用ができましたので今から帰ります」
「あ、じゃぁ俺送っていきますよ!」
溝口さんが申し出てくれたけれど、
私は溝口さんの方を振り返り、
「溝口さん」
呼びかけると、
「はい!」
溝口さんはぴしりと直立不動。
「仕事してください」
きっぱり言って再び歩き出すと、
「待ってください!」
とまたも追いかけてくる溝口さん。



