「あれ誰だよ、朝都」


浩一が不機嫌そうにみけネコお父様を睨んでいたけれど、みけネコお父様はさっすが年の功と言うべきか(見た目はチャラいけど)


「ごめんね、こんな場所まで。ちょっといいかな?」


と浩一の態度を気にするようではなく苦笑を浮かべて聞いてきた。


ガルル…


すぐ隣で歯をむき出しながら、さながら番犬のように唸っている浩一に


「ごめん浩一。先、研究室で待ってて」と強引に言い聞かせて、私はみけネコお父様の元へ駆けて行った。




大学内のカフェで、またもみけネコお父様にコーヒーをごちそうしてもらっている私。


賄賂??


今日は一体どんな爆弾を投下されるのか私はドキドキ。


「あの、昨夜はごちそうさまでした。あの…それで、倭人くんならちゃんと学校へ行かせましたので」


先手必勝!とばかりに私はきちんと報告した。


何せ未成年の高校生をたぶらかせたワルい女だから!


「いや…そのことを聞きたかったわけじゃなくて」


みけネコお父様はこめかみの辺りを掻いてちょっと遠くを目配せ。


ここは講義を終えたばかりの生徒たちが通る場所で、さっきから同じ学部の生徒たちに興味深そうにじろじろ見られている私たち。


キマヅイ雰囲気の中みけネコお父様はコーヒーを一飲みして、改めて目を上げた。





一瞬―――…黒猫の目にお父様の目が重なった。


さすが親子。きれいな猫目。


やっぱり似てる―――……





…なんて冷静に思ってる場合じゃないって。


「昨日、倭人……僕のこと何か言ってた?機嫌悪くて朝都ちゃん大変だったんじゃない?


ごめんね、押し付けるようなことして」


何か言われるかと思ってたから謝れられて私の方がびっくり。


「機嫌……まぁ変わらずですよ。変わらずテンション低いっての??変わらずマイペースでした」


「カズミちゃんのことは何か言ってた?反対してるとか賛成とか」


「…いえ、はっきりとは。賛成も反対もしてないって。できちゃったものはしょうがないみたいなことをちらりと…」


「そう。あいつさ…昔っから何を考えてるのか分からなくて。


父親である僕に対しても思ってることとか口に出さないから」



あー、そんな感じ。


私だって黒猫の考えてることが未だに分かんないし。