黒猫はわずかにつりあがった目で私をじっと見る。


いつもと違ってすぐに逸らさない。まっすぐな強い視線。


睨まれているようなのに、怖いとは感じなかった。


ただ―――真剣そうではあった。




「俺はあんたのこと“先生”なんて呼びたくない。




俺が望むのは




“彼女と彼氏”」






へ―――……?




黒猫は間抜けな表情の私からまたふいに視線を外して、顔を淡いピンク色を浮かべながらぶっきらぼうに顔を背ける。


口調は大胆で男らしいのに、言ってることは可愛い我がまま。


少年のあどけなさい幼さを残した顔が、色とりどりのネオンに反射している。








「じゃぁ呼べばいいじゃない?



私のことを“先生”じゃなくて“彼女”として。



呼び方、教えなきゃならない?課外授業は超過料金払ってもらうわよ?」






私が悪戯っぽく笑うと、黒猫は一歩近づいてすぐ近くに立った。


すらりと高い黒猫の影に、私はまたも包まれる。