叩いても揺すっても黒猫は起きない。
仕方なしに、私は一人で、眠ったままの黒猫を何とかベッドに上げて布団を掛けた。
く…
憎らしいほど長い脚の先がベッドからはみ出てる。
私のベッド…シングルベッドだしなぁ。
やっぱ買い換えるか…
しかし…
「つ、疲れた…」
細いけど、やっぱり背の高い男子高生をベッドに上げて寝かせるのは大変。
しかしどうしよう…起き出してくる気配まるでなし、だし。
てか気持ち良さそうに眠っている黒猫を起こすのも何だか可哀想だし。
そだ、まず電話!親御さん(みけネコお父様)に連絡しなきゃ!
タクシーで迎えに来てもらおう。離れるのは寂しいけど、黒猫を連れ帰ってもらおう。
なんと言っても黒猫は未成年。帰りが遅くて心配してるかもしれないし。
って、あのみけネコお父様に限って心配はしてなさそうだけど。
それでも私たちが一緒に帰ったことは知っているわけだし、せっかく彼女と認めてもらえたのにここでヘマするわけには行かないのだ。
重い気持ちを押し隠して電話をすると、
『倭人が寝ちゃった?』
とみけネコお父様もさすがに驚いている様子。
私がお酒を飲ませたとはさすがに言い出せず、
「…はい。なんかすごく疲れてたみたいで…声かけても揺すっても起きないんですぅ…」
困り果てたように言うと、
『まー、あいつは一旦寝ると朝まで目覚めないから』
と、みけネコお父様は電話の向こうで苦笑。
『朝都ちゃん、今日だけ―――
悪いけど…そこで寝かせてやってくれる?』
ミケネコお父様がちょっと寂しそうに呟いて、
その言葉に私はベッドの方をちらりと見た。
黒猫は僅かに丸めた背中をこちらに向けて、心地良さそうに寝息を立てている。
『あいつ、疲れてたみたいだし―――』
みけネコお父様は、さっきの挑発するような声音じゃなくて凄く優しかった。
電話とベッド。二匹の猫の間に挟まれた私はぎこちなく頷いた。
ほんと…
不器用な親子ネコたちだな。



