「はぁ~疲れた」


コートを脱いでベッドに放り投げて首を回していると、黒猫はコンビニの袋をテーブルの上で広げた。


「おっさん丸出しだな」


「いいじゃない。あんたと二人なんだから。かっこつける必要もないでしょ?


てか手洗いなさい。あと、うがいも」


と言うと


「朝都、おかーさんみたい」


と黒猫がぶつぶつ言いながら洗面所に向かっていく。


あっそ。“おっさん”の次は“おかーさん”ですか。


私は黒猫の“彼女”なのよ??


ネコは水が嫌いって言うけど私の飼い猫はおりこうさん。


言われた通りちゃんと石鹸で手を洗ってる。


私はそのスラリとした背中に近づいて、黒猫の後ろから手を回した。


鏡の中で黒猫が目を開いた。


びっくりしたようにちょっとだけ体を固まらせる。


そんな黒猫の腕を掴んで、


洗面台の上に乗っかっている消毒用のアルコールポンプに、黒猫の手を導くと


「この時期風邪が流行るから、ちゃんと消毒しなさいね」


と言ってポンプを押して液体を黒猫の手に。





「おかーさんはこんなことしないよね」





黒猫が鏡の中で目を細める。


「私はあんたのおかーさんじゃないから」


そう言ってうっすら笑うと、黒猫もちょっと笑った。


「俺の飼い主か」







「ううん。あんたの






恋人」