わっ!わわっ!!
思わず額を押さえながら慌てて体を戻すと、目の前で黒猫も頬を薄桃色に染めてそっぽを向いていた。
周りの人に見られてかな??
思わず気になってキョロキョロと辺りを見渡すと、一瞬のことでほとんどの人は気付かなかったみたいだけど、
「キャー!!今の見たっ!?超羨ましい!」
と斜向かいのボックス席に座っていた女子高生たちがキャイキャイ。
み、見られてた。
は、恥ずかしすぎる……↓↓
その様子に気付いているのか、いないのか…
「朝都がいけなんだー」
頬杖をついて唇を尖らせている黒猫。
少年の恥ずかしそうな…無邪気な言葉に、またもキュンと胸がなる。
だけど意地悪な私は飼いネコをもっと苛めたくなっちゃった。
「で?何で私が前のバイトを辞めた事、キミは知ってたのかなぁ?」
わざと意地悪な言葉で黒猫を見ると、
いっつも見事にスルーしてくるってのに、今度ばかりは恥ずかしそうにまたも顔を赤らめて
益々私から視線を逸らす。
「………親父から…聞いたから…その、俺が……
気になって。朝都のこと
知りたくて」
そう…だったの。
「何よ。別に隠すことじゃないじゃない」
私は何だか拍子抜けして、すっかりぬるくなったコーヒーを一口。冷めてもまずくないのは黒猫と一緒だからだ。
砂糖もミルクも入れてないブラックコーヒーのはずなのに、
何だかとっても
甘く感じる。
「だって俺ストーカーみたいなことしてるかなって?引かれたら…とか、考えるし」
引くわけないじゃない。
『知りたくて』
どうしよう。黒猫の言葉にどうしようもなく嬉しくて
ドキドキするよ。
でもやっぱり―――この甘いコーヒーのコクのように、互いの想いが深いものになったから、
私はミケネコのお父様に隠しておくのはやっぱりイヤだ。
「倭人を育ててくれたお父様だもの。
ちゃんと、ちゃんと伝えなきゃ―――
こそこそ隠れてじゃなくて、正々堂々としていたいの。
それでクビになったらなったとき。
私は認めてもらいたいの、お父様に」



