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この嫌がらせのような攻撃に、先に根をあげたのは私。
「ねぇ、やっぱお父様にホントのこと言おう」
この日はお勉強の日じゃなかったけれど、私と黒猫はお外のファミレスデート。
ホットコーヒーのカップに口を付けてため息を吐く。
コーヒーは研究室の安っぽいインスタントとさほど変わらないけど、
研究室で飲むより数倍おいしく感じるのは、目の前に黒猫がいるからだろうか。
話してること全然ラブネタじゃないケド。
でも眺めてるだけで幸せ、って言うか…
だめだ。私のバイオハザード(変態)ウィルスは活動を休むことなく元気に増殖していってるし。
「はぁ?あんた、あいつに俺と付き合ってること知られたらクビだって」
黒猫は機嫌悪そうに言ってホットカフェオレのカップに口を付ける。ミルク多めのカフェオレから甘い香りの湯気がたちのぼってた。
そんなの飲んで大丈夫なの??
ちょっと心配に思ったケド、
「あづっ!」
思った通り黒猫は慌ててカップを口から離した。
あーあ…やっぱり。
だってネコだもん。猫舌。
黒猫は舌をちょっと出して
「火傷した」と顔をしかめている。
「もぉ、大丈夫??」
思わず黒猫の頬に手を伸ばして、だけどその手を慌てて引っ込める。
だって……
黒猫がちょっと唇から覗かせた赤い舌とか、何か色っぽかったから。
バイオハザードウィルスに侵されてる私だ?
ここが夕方のファミレスだということも忘れて、思わず黒猫の顔を両手で挟んで自らキスしてしまうと言うおっそろしい行動を起こしてしまうと言うことが簡単に予想できたから…
ああ…私、
黒猫といると
キュンキュンしたり、ドキドキしたりで心臓が変になりそうだ。



