「いや、全く意味が分かりませんが…」
私が目をぱちぱちさせてると、黒猫は苛立ったように
「だから!」と声を荒げた。
玄関ホールで言い合い(?)をしていると、
「倭人じゃん?何?でかけんの?」
と黒猫の向こう側で、黒猫の幼馴染トラネコ、リョータくんの声が。
黒猫は慌てて私の頭から手を退けると、ちょっとだけ振り返って
「あー、うん…」と歯切れ悪く返している。
「あっれー?♪アサコちゃんじゃん♪帰っちゃうの??俺んち寄ってってよ~」
黒猫に隠れていた私を見つけると、トラネコリョータくんはうきうきとした足取りで向かってくる。
アサコじゃありません。アサトです。
そして君のおうちには行きません。
と心のなかでツッコミを入れていた私の手を、黒猫はぐいと引っ張る。
トラネコくんの言葉を無視するかのように、
「行こうぜ」とちょっと余裕のない表情で促し、
「あ、じゃぁまた」と慌ててトラネコリョータくんに手を振る。
「まったね~☆」
トラネコリョータくんは、機嫌悪そうにしてる黒猫のことを全然気にしてない様子でぶんぶん手を振っている。
慣れてるのか?
溝口さんといい、みけネコ店長といい、トラネコくんと言い…
私の周りにはチャラいのばかりだ。
みんな愛想はいいけど、軽いってのかな~
って、周りのメンズのこと考えてる余裕、今の私にはないって。
「く、黒猫待って!」
唯一、硬派(?)な黒猫は不機嫌だし…
どうしたって言うのよ。



